医事・世事をフリートーク

続・平和に暮らすために‐憲法9条改正案‐

2016.11.03

〈憲法改正賛成・反対〉
まず、憲法改正についての私の考えを述べます。

現行憲法は、丁度70年前の1946年11月3日に公布され、それなりに定着しています。
現時点での憲法改正には反対です。
拙速に変えるとかえって悪くなりそうだからです。

ただし、全国民が、憲法に興味・関心を抱き、その内容を知り、一人ひとりが自分の考えを持ち、いろいろな場所であらゆる機会に議論をし、その上で大多数の国民の理解と賛成が得られる改正案ができれば、手続きに添った憲法改正に賛成します。

心配なことは、対案を持たずに、戦略的抑制のために何でも反対していると、思考の停止に陥り、気がつけば一部の勢力の扇動によって憲法が間違った方向に変えられ、70年以上続いた平和な暮らしが奪われてしまうことです。
今、大切なことは、憲法改正反対と言い続けるだけでなく、どうしたら9条の平和の精神を失わずにすむかを考えることです。

〈憲法9条についての改正私案〉
憲法改正の環境が整ったとしたらという前提で、3つの原則を立てて私個人としての改正試案を作りました。

1.平和を願う国民の気持ちを大切にする。
2.国際社会に対して日本の立場をはっきりさせる。
3.小学生が学んでわかるような表現にする。

– 改正案-
第二章 戦争の放棄
第9条 日本国民は、世界の平和と安全を望み、すべての戦争を永久にしない。
第2項 戦争のために戦力を持たず、集団的自衛権を行使しない。
第3項 前項の例外として、専守防衛のために必要最小限の自衛隊を組織し、その力を自らの正当防衛のためだけに使うことができる。

〈現行憲法9条と改正案の比較〉
– 現行憲法-
第二章 戦争の放棄
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

戦争をしても、当事国は侵略戦争とは決して言いません。
どの国も自国の正義を主張し、自衛や報復や制裁のための大義ある戦いと言い訳してきました。
その結果多くの尊い命が失われ、敗戦国と戦勝国となってしまうのです。
何度となく繰り返してきた不幸な歴史からしっかりと学ぶべきです。
現行憲法では、侵略戦争はしないが、自衛のための戦争は否定されていないと解釈する説もあるので、改正案第1項で、修飾語をつけずに自衛のための戦争を含むすべての戦争を否定しました。

現行憲法では、個別的自衛権と集団的自衛権の行使について解釈が分かれてきました。
平和を守るために集団的自衛権の行使が必要だという考え方もありますが、戦後の71年間がそうだったように、集団的自衛権を行使しないほうが、平和な暮らしを続けられると思います。
現行憲法の解釈では元々個別的自衛権を持つことすら慎重であったのに、集団的自衛権の行使が可能になった今日、国際連合平和維持活動の駆けつけ警護を巡る議論にもみられるように、自衛権行使の範囲や条件が曖昧になり、防衛費の増額とあいまって、「いつか来た道」の入口に立たされているような気がしてなりません。

Coffee Breakの『続 医師不足を解消しよう』で「すべて理想どおりやろうという意識を捨てなければなりません。どこかで折り合いをつけるということを納得しなければなりません」と述べたことがありますが、あれもこれもと欲張ってはいけないのです。
政府は、2014年4月1日に武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則を閣議決定し、武器輸出を解禁しました。
防衛省が2015年に3億円の予算で創設した防衛装備品の開発予算は、16年度には6億円と倍増し、17年度には110億円の概算要求額となりました。

平和な暮らしを続けるにはどうすべきかに絞って考えてみました。

人に傷つけられたくなければ、人を傷つけないことです。
それらのことを踏まえて改正案第2項後段で、他国の戦争に巻き込まれる可能性の高い集団的自衛権の行使を明文化して否定しました。

現行憲法第2項で、戦力を保持しないとあるのに、自衛隊の存在はどうなのかという素朴な疑問に対して、文理解釈として無理があるので、政府が、自然権としての自衛権を認め、論理解釈で自衛隊の存在を合憲としてきたことも9条をわかりにくくしています。
改正案第3項で、戦力を持ち使う要件を限定して、ほぼ国民の理解を得ている自衛隊の存在を明記しました。

〈真の戦争放棄〉
いかなる理由によるいかなる戦争であっても、戦争を正当化することはできません。
他国から不正な侵害を受けたとき、反撃することは正当防衛で戦争ではありません。

繰り返しますが改正案では、紛れもないようにすべての戦争を否定しました。
つまり、わが国の領土・領海・領空を出て、武力行使をせず、報復であっても相手国の領土・領海・領空へ攻め込まないということです。
さらに、戦争当事国・紛争当事者のどちらにも加担しないし、国際貢献でも、戦争・紛争中の国・地域には行きません。

〈世界の中の日本〉
先の大戦から学ぶことは、決して国際的に孤立しないように、ひたすら平和を願い、専守防衛でいかなる戦争もせず、他国に脅威を与えない日本の立場を丁寧に説明し、国際協調を大切にすることです。

自衛隊の海外派遣は、平和が保たれている国・地域にしか行けないという制約をつけても、自然災害や事故のときはもちろん、常日頃から自衛隊を始め、大勢の日本人がそれぞれの立場で幅広い国際貢献を積極的に重ねていけば、国際世論の理解を十分得られると思います。

もとよりこの改正私案は、平和を願う一国民として、自衛隊を明記しても、二度と戦争の誤ちを繰り返さないという平和憲法の精神を、決して後退させることなく、より確実に反映できないものかとせい一杯考えて、変えてみた一試案に過ぎません。

子や孫の世代も、この平和な日々の暮らしを続けられるように、一億総出で知恵をしぼって、国民的な議論を重ねて、誰が読んでも同じ解釈となり、誰もが納得するわかりやすい憲法ができることを願っています。

先生はいかがお考えでしょうか? (A)